「中退共」加入で掛金を経費にして節税しよう!メリット・デメリットを税理士が詳しく解説!
群馬県太田市のワリとフランクな税理士わくいです。
中小企業の節税対策には王道があれこれとあります。
そう、その王道の一つが「中退共」です。
従業員の退職金を積みながら、掛金を経費にできるメリットがありますが、デメリット(注意点)もあります。
加入の際は、検討すべき事項がありますので、事前に確認しておきましょう。
中退共とは?
いわゆる「中退共」とは、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部が運営する、「中小企業退職金共済」という共済制度の略です。
せっ!説明が長い!!
ムー係長
中退共(中小企業退職金共済)は、自社で退職金を工面するのが難しい中小企業のための退職金積立制度なのです。
従業員の退職の際、多額の退職金を工面するのに苦労された方もいるのではないでしょうか?
退職の都度、資金を用意するのではなく、計画的に事業年度ごとの掛金を積み立て、なおかつ、掛金を全額経費にできる中小企業のミカタの共済制度です。
「中小企業退職金共済制度」という名前のとおり、中小企業だけが加入できます。
ここでいう中小企業とは、具体的には以下の条件に該当する企業をいいます。
業種 | 資本金等 | または | 従業員数 |
一般業種(製造業、建設業など) | 3億円以下 | 300人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
資本金要件or従業員数要件のいずれかが該当していれば加入できることになります。
例えば、サービス業なら従業員数が300人いたとしても、資本金が1,000万円の法人であれば加入できることになります。
中退共の掛金と退職金額
従業員に支払われる退職金額は、中退共制度の加入期間中に納付した「毎月の掛金」と「納付した月数」によって決まります。
つまり、「毎月の掛金」をどう決めるかが、中退共制度の主要ポイントとなります。
退職時の給与と中退共加入時の給与を比較すると、多くの場合、退職時の給与の方が高くなります。
給与と退職金はおおむね比例的な関係にあるので、一定の期間ごとに掛金月額の見直しを行うのが一般的です。
「毎月の掛金」の決定、変更の代表的な例は次のとおりです。
(1) 定額方式
退職金を定年や勤続年数を基準にして目安を決めます。
それから掛金月額を逆算する方法です。
たとえば、「勤続35年の場合は、支払う退職金は1,000万円にしよう」と決めます。
中退共の「基本退職金額表」を確認すると、毎月の掛金は20,000円になることがわかります。
定額方式は、勤続年数と退職金から「毎月の掛金」を算出する方法です。基本退職金額表は、法令の改正により変わることがあります。
詳しくは中退共の「基本退職金額表 」をご参照ください。
(2)給与を基準にした方式
賃金をいくつかのグループに分け、それに応じて掛金を決める方法です。
賃金 | 掛金月額 |
---|---|
16万円未満 | 8,000円 |
16万円から20万円未満 | 10,000円 |
20万円から24万円未満 | 12,000円 |
24万円から28万円未満 | 14,000円 |
28万円から32万円未満 | 16,000円 |
32万円から36万円未満 | 18,000円 |
36万円から40万円未満 | 20,000円 |
40万円以上 | 22,000円 |
(3) 勤続年数を基準にした方式
賃金を基準とする方式と同じように、勤続年数をいくつかのグループに分け、掛金月額を決める方式です。
勤続年数 | 掛金月額 |
---|---|
2年未満 | 8,000円 |
2年から5年未満 | 10,000円 |
5年から10年未満 | 12,000円 |
10年から15年未満 | 14,000円 |
15年から20年未満 | 16,000円 |
20年から25年未満 | 18,000円 |
25年から30年未満 | 20,000円 |
30年以上 | 22,000円 |
掛金については、従業員ごとに各人の基本給に応じて決めることができますが、退職金規定と整合性のある設定をするといいでしょう。
税理士わくい
キャッシュアウトも考慮しつつ、ですね!
にゅーみ
中退共の5つのメリット
中退共制度を活用する5つのメリットをご紹介致します。
(1)退職金制度で人材確保と定着率アップ!
中小企業の場合、退職金制度を整備している会社というのは案外多くありません。
社長のさじ加減で、
あなたは頑張ったから退職金出すね。
起業家B吉
というケースが多いのではないでしょうか。
退職金規定が整備されていない中小企業が多い中、求人に「わが社は退職金制度アリ!」を記載できるのは差別化となります。
「退職金制度アリ!」の文言がある=「しっかりした会社」のイメージがつきます。
中退共制度は福利厚生を手厚くするので、人材の確保に加え、従業員の定着化にもつながります。
(2)掛金の全額を経費にできる
中退共の掛金は、全額を福利厚生費として経費にすることができます。
法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費、ですね!
にゅーみ
(3)退職金の管理が不要!
退職金の管理は中退共サイドがしてくれます。
管理の手間がかからず、かつ運用リスクを事業者が負いません。会社は掛金を中退共に納めるだけです。
退職金試算額のお知らせもあるので、今どのくらいの退職金が社外で積み立てられているかを把握することができます。
従業員が退職した際には、中退共から従業員に直接給付されます。
税理士わくい
退職金管理の負担が減りますね!
起業家さや
(4)掛金の一部が国から助成される
なんと、一定の条件を満たすことで掛金の一部を国が助成してくれます。
助成金制度には次の2種類があります。
①新規加入掛金助成
中退共制度に新たに加入する事業主に、加入後4か月目から、掛金月額の2分の1(上限5,000円)を1年間国が助成します。
さらに、短時間労働者の特例掛金(掛金月額4,000円以下)加入者については、次の額を上乗せして助成します。
(掛金月額2,000円の場合は300円、3,000円の場合は400円、4,000円の場合は500円)
②月額変更(増額)助成
18,000円以下の掛金月額を増額変更する場合は、増額分(増額前と増額後の掛金月額の差額)の3分の1を1年間国が助成します。
20,000円以上の掛金月額からの増額は、助成の対象にはなりません。
なお、掛金の助成は、助成金を支給する方法でなく、掛金から助成金を免除する方法により行われます。
その間は、掛金月額から助成額を控除した額が口座振替されることとなります。
参考:中退共「助成金制度」
よっ!太っ腹!
ムー係長
(5)従業員にも税のメリットがある
会社が中退共に支出した掛金は、従業員の給与所得になりません。また、給付金は加入従業員が退職したときだけでなく、死亡した場合にも遺族に直接支払われます。
ちなみに、受け取り方は「一時金」と「分割」の方法があります。
一時金で受け取る場合は、その金額は「退職所得」とされます。
退職所得は退職所得控除が使えますので、従業員からすると給与所得として受け取るよりも税のメリットがあります。
分割で受け取る場合は「雑所得」とされます。
雑所得は公的年金等控除が使えますので、一時金で受け取るよりも比較的少ない課税ですみます。
中退共は、従業員にとってもメリットのある制度ですね。
インターンけろ吉
中退共の5つのデメリット(注意点)
次に、中退共制度に加入する際の5つの注意点をご紹介致します。
(1)中退共は全員加入
原則、従業員を全員加入させなければなりません。中退共は福利厚生費として掛金を経費にできますが、福利厚生費の原則は「全員みな平等」です。
頑張っている人だけを中退共に加入させたい!
起業家さや
といったように、特定の人を選んで加入させることはできません。
なお、期間を定めて雇われている人、試用期間中の人などは加入する必要はありません。
(2)社長、役員は加入できない
残念ながら、事業主や代表取締役社長、法人の役員は中退共に加入できません。ただし、使用人兼務役員は加入することができます。
次の場合は、使用人兼務役員となります。
- 役員のうち支店長、工場長、部長等使用人としての職制上の地位を有する
- 常時使用人としての職務に従事する
- 従業員として賃金の支給を受けている等の実態がある
なお、次のような役員は、使用人兼務役員とならないので注意しましょう。
- 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
- 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
- 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行役員
- 取締役(委員会設置会社の取締役に限ります。)、会計参与及び監査役並びに監事
使用人兼務役員について詳しくはコチラを参照ください。
社長や役員の退職金準備なら「経営セーフティ」がオススメです!
税理士わくい
(3)退職者に直接支払われる
中退共に支払われた掛金は、退職事由に関わらず、共済機構等から従業員に直接支給されることになります。
従業員が自己都合で最悪の辞め方をしたとしても、会社側で退職金支給額を調整することができません。
定年退職でも自己都合退職でも、一律で同じ額が支給されることになります。
ちなみに、会社には掛金が入金されないので、会社の経理的には、「雑収入」が発生しないことになります。
定年まで勤めあげる人、会社を即フェードアウトする人、みな平等なんですねー。
インターンけろ吉
(4)給付額が掛金を下回ることも
中退共制度は、積立期間が短い期間で従業員が退職した場合、支給額が掛金総額を下回ることがあります。
これは長期加入者の退職金を手厚くするためです。
掛金の納付月数が11か月以下の場合、退職金は支給されません。
12か月~23か月以下の場合は、掛金総額を下回る額になります。
24か月~42か月以下では支給額が掛金相当額となります。
43か月からは運用利息が加算され、長期加入者ほど有利になります。
1~2年の退職者が多い会社は、中退共の加入は慎重に検討しましょう。
にゅーみ
私の前職の会社は、3年勤務した人が「中退共」に加入できる規定となっていました。
税理士わくい
税理士わくいは2年4か月で退職したので中退共加入しませんでしたねー。
インターンけろ吉
(5)キャッシュに余裕がないと加入は厳しい
中退共は、「従業員全員加入」、「毎月掛金」となるので、資金繰りにある程度余裕のある会社でないと長期的な加入が厳しい制度となります。生命保険のような「契約者貸付制度」がないため、資金不足で掛金の延滞が続くと強制的に解約となってしまいます。
まとめ
退職金制度の導入を考えているけど、自社で管理するのは大変だ。
そんな時、簡単管理で掛金を全額経費にできる中退共がオススメです。
ただし、ある程度資金繰りに余裕がある会社でないと、長期的な活用ができなくなるので注意が必要です。
役員用に退職金を考えているなら「経営セーフティ」で準備金を代用する方法もあります。
税理士わくい
節税って色々あるんですねー。
ムー係長
税理士 涌井大輔事務所は夢を持って創業される経営者様を応援しています!
今日もご覧いただきありがとうございました。
群馬県太田市の【ワリとフランクな税理士】涌井大輔でした。
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