中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は法人、個人事業主問わず掛金を全額経費にできる!メリットと注意点を解説!
群馬県太田市のワリとフランクな税理士わくいです。
「中小企業倒産防止共済」という商品を聞いたことございますか?
通称、セーフティ共済!
税理士わくい
はい、節税に興味をお持ちのあなたは、一度は「セーフティ共済」の噂を聞いたことがあると思います。
具体的に、「どのような共済で、どのようなメリット・注意点があるのか」、について、お伝えいたします。
そもそも中小企業倒産防止共済とは?
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)は、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなくなった場合の、「連鎖倒産」を防ぐための共済制度です。
想像してみてください。
あなたのメインの取引先が倒産してしまいました。
売上のほとんどが、メイン取引先。。。
月商の2~3か月分の売掛金が回収できない、この状況。。。
アウッッット!
ムー係長
正直毎月の売掛金の回収をあてにして、買掛金を支払う中小企業が多数だと思います。
中小企業倒産防止共済は、そんな中小企業の連鎖倒産を防ごう、という中小企業のための制度なのです。
では、具体的な制度の概要と、加入のメリット・デメリットについてみていきましょう。
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)に加入できる条件
中小企業倒産防止共済は、
1年以上継続して事業を行っている中小企業者、かつ、下記表の「資本金額等」又は「従業員数」のいずれかの条件を満たせば加入できます。
業種 | 資本金額等 | 従業員数(常時雇用) |
製造業、建設業、その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
条件を満たせば、法人だけでなく、個人事業主も加入できます。
会社だけかと思ったら、個人事業主も加入できるんですね!
にゅーみ
中小企業倒産防止共済に加入するメリット
中小企業倒産防止共済のメリットは3つあります。
- 取引先が倒産して売掛金回収ができなくなったら貸付が受けられる
- 掛金の全額を損金(経費)にできる!
- 40ヶ月以上の加入で掛金が100%戻る!
メリット1|取引先が倒産して売掛金回収ができなくなったら貸付が受けられる
倒産防止共済に加入後、6か月以上経過して取引先企業が倒産した場合、
下記のいずれか少ない額の貸付(最大8,000万円)が受けられます。
- 売掛金や受取手形等の回収が困難となった額
- 積み立てた掛金総額の10倍に相当する額
倒産防止共済の積み立て上限額は800万円です。
その10倍の8,000万円が、貸付金額の最大となります。
ちなみに、ここでいう「倒産」には、一定条件を満たす私的整理も含みます。
なお、「夜逃げ」は、本制度の取引先事業者の「倒産」には該当しませんのでご注意ください。
税理士わくい
借入するときの条件は?
取引先の会社に万が一のことがあったときは、共済金を借り入れることができます。
借入については、銀行で融資を受けるときのように、担保・保証料の必要はありません。
また、共済金の借入は無利子です。
ただし、借入を受けた共済金の1/10が、掛金総額から減額されてしまいます。
つまり、100万円を借り入れたら、10万円分は戻らないことになります。
仮に、8,000万円を借り入れたら、1/10の800万円が戻らないということです。
利息よりも高いのではないか?と思う方もいるでしょう。
ですが、急に多額の融資をしてくれる銀行というのは、取引関係が良好でない限りなかなかありません。
掛金を納めることになりますが、無利子・無担保・無保証で借り入れできるのは、大きなメリットになります。
借入の償還期間は、5~7年(うち据置期間6か月)の毎月均等償還となります。
税理士わくい
取引先が倒産しなくても、有利子で借り入れできる「一時貸付金」制度なんてのもあります。
にゅーみ
メリット2|掛金の全額を損金(経費)にできる!
法人であれば、掛金全額を損金に算入することができます。
個人事業主であれば、掛金全額を必要経費に算入することができます。
中小企業倒産防止共済は、法人でも個人事業主でも、掛金全額を必要経費(損金)に算入することができるため、節税対策としての側面もあるのです。
連鎖倒産リスクに備えつつ、掛金を経費にして税負担を軽減できるメリットがあります。掛金は月額5,000円~20万円の範囲で設定でき(5,000円きざみ)、加入後増額することもできます。
ちなみに、損金・必要経費化は年240万円、最大800万円までとなっています。
1年分前納という形で損金・経費化することができるので、決算直前でも240万円一括経費にすることが可能です。決算対策に有効ですね!
インターンけろ吉
メリット3|40ヶ月以上の加入で掛金が100%戻る!
40か月以上の納付期間があれば、掛金の100%が戻ってきます。仮に、800万円積み立てていた場合、納付期間が40か月以上あれば、800万円掛金全額が戻ってきます。
なお、解約手当金は解約の理由によって3種類に分類され、種類によって支給率が変わります。
解約の種類および支給率については下記をご参照ください。
掛金納付月数 | 1.任意解約 | 2.みなし解約 | 3.機構解約 |
---|---|---|---|
1か月~11か月 | 0% | 0% | 0% |
12か月~23か月 | 80% | 85% | 75% |
24か月~29か月 | 85% | 90% | 80% |
30か月~35か月 | 90% | 95% | 85% |
36か月~39か月 | 95% | 100% | 90% |
40か月以上 | 100% | 100% | 95% |
- 任意解約
共済契約者が任意でいつでもきる解約 - みなし解約
個人事業主の死亡や法人(会社など)の解散・分割の際に、その時点で解約されたものとみなす場合 - 機構解約
12か月分以上の掛金の滞納や共済金の貸付けなどに不正行為があった場合に中小機構が行う解約
中小企業倒産防止共済に加入する際の注意点
中小企業倒産防止共済には「連鎖倒産リスク」を軽減しながら「節税効果」も得られるメリットがあります。
一方で、中小企業倒産防止共済に加入する際の注意点をしっかり理解しておく必要もあります。
具体的には、以下の3つです。
- 手持ちキャッシュを考慮した掛金を設定する
- 解約の時期が早いと返戻金の戻りが目減りする
- 解約のタイミングを考慮しないと支払う税金が多額に!?
注意点1|手持ちキャッシュを考慮した掛金を設定する
中小企業倒産防止共済は、月5,000 円~ 20 万円の範囲で掛金を自由に設定することができます。
前納であれば、年240万円を全額損金・必要経費として税の優遇を受けることも可能です。
ですが、節税に意識が行き過ぎてしまい、手持ちキャッシュが不足して運転資金が回らないというケースもあります。
また、そもそも決算が赤字の場合は節税の効果すらなくなる可能性もあります。
節税ありきで加入せず、手持ちキャッシュを考慮した掛金の設定を検討する必要があります。
注意点2|解約の時期が早いと返戻金の戻りが目減りする
中小企業倒産防止共済の加入のメリットの一つに、「40か月以上の納付期間があれば掛金の100%が戻る」があります。
逆をいうと、40か月満たない場合は、返戻金が目減りするので注意が必要です。
そして、掛金の納付期間が12か月未満の場合は、掛金の戻りはゼロとなります。
掛金納付月数 | 1.任意解約 | 2.みなし解約 | 3.機構解約 |
---|---|---|---|
1か月~11か月 | 0% | 0% | 0% |
12か月~23か月 | 80% | 85% | 75% |
24か月~29か月 | 85% | 90% | 80% |
30か月~35か月 | 90% | 95% | 85% |
36か月~39か月 | 95% | 100% | 90% |
40か月以上 | 100% | 100% | 95% |
仮に、決算対策で240万円前納したけど、翌期には運転資金が回らなくなったので解約したい、といっても1円も掛金が戻ってきません。
前述した注意1にも関係しますが、40か月は解約しないことを前提に、手持ちキャッシュや今後のキャッシュフローも考慮して加入を検討する必要があります。
注意点3|解約のタイミングを考慮しないと支払う税金が多額に!?
中小企業倒産防止共済のメリットは、「掛金の全額を損金・必要経費に算入できる」ことです。
では、解約して積み立てた掛金を受け取るときの経理処理はどうなるのか。
はい、全額「雑収入」として収入・益金計上します。
税理士わくい
解約返戻金まるまる利益として、税金計算の対象となるわけです。
積み立てている期間は経費にできるけど、受け取る時は収入になる。
ムー係長
中小企業倒産防止共済は節税効果があるといいますが、厳密にいうと、「支払う税金を先送りしている」だけなのです。
なので、解約するタイミングが結構重要になったりします。
具体的には、次のタイミングで解約することをオススメします。
- 今期は大きな赤字になりそうだというタイミング
- 今期に大きな退職金を払うというタイミング
- 今期に大きな修繕が発生するというタイミング
つまり、「大きな損金・必要経費が発生」し、「多額のキャッシュが必要」というタイミングにあわせて解約すれば、解約返戻金の利益と相殺できるというわけです。
まとめ
中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)は、連鎖倒産リスクを軽減しつつ、節税効果もある中小企業のミカタです。
ただし、加入に際しては、現在と将来のキャッシュを十分考慮する必要もあります。
キャッシュを考慮せず、節税ありきで加入すると痛い目に合う可能性もあるので注意しましょう!
個人事業の場合、事業所得以外の収入(不動産所得等)には、掛金の必要経費としての算入が認められませんのでご注意ください。
にゅーみ
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今日もご覧いただきありがとうございました。
群馬県太田市の【ワリとフランクな税理士】涌井大輔でした。
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