消費税の免税事業者になれない「特定期間による判定」に該当するケースを解説!
群馬県太田市の【ワリとフランクな税理士】涌井大輔です。
個人事業者の方が、晴れて新たに会社を設立した場合、ザックリ「最初の2年間は消費税の免税事業者になる」、と聞いたことがあるかと思います。
これが覆される「特定期間による判定」について解説していきます。
特定期間による判定とは
以前、新たに設立した法人や、2年前の課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税の免税事業者とならない場合があるという記事を書きました。
その免税事業者とならない特例の1つに「特定期間による判定」があります。
特定期間による判定とは、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間 (前事業年度開始の日から6か月間)の課税売上高及び給与等の支払合計額がともに1,000万円を超えた場合には、その課税期間から課税事業者になる特例です。具体的には、仮に新たに法人成りした場合、下記の項目いずれも該当すると第2期目から課税事業者になります。
- 第1期目の事業開始日から6ヵ月の間に、1,000万円超の課税売上高がある
- 第1期目の事業開始日から6ヵ月の間に、1,000万円超の給与等を支払った
課税売上高と給与の支払いが、ともに1,000万円を超えるのが、この特例のポイントです。
第1期目の課税売上高が1,500万円でも支払給与が800万円であれば、第2期目は免税事業者となります。
個人事業の時代からいい感じで事業が成長していた場合は、この特例に該当する可能性が高いので、特定期間による判定は特に注意が必要です。
なお、この特例の適用は会社設立当初に限りません。
仮に、第8期目が課税売上高800万円だったとしても、第9期目の最初6ヵ月間に課税売上高、支払給与ともに1,000万円を超えれば、第10期目は課税事業者となります。
つまり、いつこの特例が適用になるかわからないので、法人成りしてからは必ず、基準期間の判定と一緒に、「特定期間による判定はし続ける」必要があります。
以下、特定期間、給与支払の範囲について細かくみていきます。
特定期間の判定
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になりますが、その「特定期間」とはどのような期間のことをいうのか具体的にみていきます。
なお、下記のケースは事業年度が1年である一般的な法人をイメージしています(毎期の決算が4カ月などの法人はイメージしていません)。
個人事業主の場合
例えば、平成29年3月1日に新規開業した場合には、平成29年3月1日から6月30日までの3カ月間の課税売上高(又は給与等支払額)で、平成30年の課税事業者の判定をすることになります。
開業日から6ヵ月間ではありません。
また、仮に平成29年7月1日から12月31日までの間に開業した場合には、特定期間の課税売上高(又は給与等支払額)がないため、平成30年の課税事業者の判定は不要となります。
つまり、平成30年は免税事業者となります。
個人事業主の場合は、あくまでも判定は前年1月1日から6月30日までの期間で課税売上高又は給与等支払額をみます。
法人の場合
事業年度が1年ある法人の場合
このケースは前事業年度がまるまる1年あることを想定しています。
例えば、3月決算の会社の場合、前年4月1日~9月30日までの6カ月間の課税売上高(又は給与等支払額)で、当期の課税事業者の判定をすることになります。
通常の会社ですと2期目以降は、1年決算の会社がほとんどだと思います。
このケースは、3期目以降が課税事業者になるかどうかの判定からです。
つまり、2期目の課税売上高、給与等支払額をみて判定します。
設立1期目が8か月以上の法人の場合
考え方は前事業年度が1年ある場合と同じです。
例えば、3月決算の会社の場合、第1期目の4月1日~9月30日までの6カ月間の課税売上高(又は給与等支払額)で、第2期目の課税事業者の判定をすることになります。
法人設立1期目が8か月未満の法人の場合
①月の途中で設立した法人で前事業年度(7か月半)の決算期末が月の末日の場合
例えば、4月15日に新たに法人成りした場合、第1期目の4月15日~9月30日までの6カ月間(実質5か月半)の課税売上高(又は給与等支払額)で、第2期目の課税事業者の判定をすることになります。
法人設立の日から6か月後は10月14日となりますが、前事業年度の決算期末が月末の場合、6か月後(11月14日)の前月の末日である10月31日が特定期間の末日となります。
したがって、前事業年度の4月15日から10月31日までの期間が特定期間となり、その期間の課税売上高(又は給与等支払額)で判定することとなります。
②法人の設立1期目が7か月以下の場合
例えば、4月1日に新たに法人成りして、第1期目の事業年度末日が10月31日だったとします(第1期目の期間は7カ月ジャスト)。
この場合、第2期目からみれば、法人設立の日から前事業年度終了日までに6か月の期間がありますが、前事業年度が7か月以下の場合は、その期間は特定期間に該当しないことになります。
したがって、法人の設立1期目が7か月以下の場合は前事業年度の課税売上高による判定の必要はありません。
つまり、1期目に課税売上高、給与等支払額がともに1,000万円を超えていても、2期目は免税事業者となります。
特定期間の給与等支払額の範囲
特定期間中に支払った「給与等の金額」とは、所得税法施行規則第100条第1項第1号《給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書》に規定する給与等の金額をいいます。
具体的には下記のとおりです。
- 所得税の課税対象とされる給与、賞与、退職金
- 所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は含まない
- 給与の未払額は含まない
- 出向先の事業者が払う給与は当社では含まない
ポイントは非課税通勤費、未払額は含まない点です。
決算で給与未払い計上したとしても、その分は計算上含まず、支払基準で判定することになります。
まとめ
特定期間による消費税の課税事業者の判定は、特定期間をしっかり把握し、給与等の支払額の範囲を理解しておくことが大事です。
仮に、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えたとしても、給与等の支払額が1,000万円以下であれば、その事業年度は免税事業者となります。
その場合、「未払い給与を含めて計算したら、1,000万円超えたから課税事業者となった」と判定しないように注意しましょう。
消費税に関することは税法の中でもデリケートなので、専門家に相談することをオススメします。
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今日もご覧いただきありがとうございました。
群馬県太田市の【ワリとフランクな税理士】涌井大輔でした。
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